次回例会は、数多くのオペラなどでご活躍されている、三木市出身のソプラノ歌手・鬼一薫さんにご出演いただきます。
今回のブログでは、鬼一さんへのインタビューをご紹介します。
今回のブログでは、鬼一さんへのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)、藤田紀子(いろはサークル)
鬼一薫さん
―まずはじめに、鬼一さんが音楽に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
鬼一薫さん(以下、鬼一さん) 私の母がピアノ教室の先生で、子どもの頃に母の伴奏で童謡を歌う遊びをよくしていて、とても楽しかった記憶があります。生活の中に音楽があふれていて、自然に興味を持ったのかなと思っています。母は他に得意なことがなかった私に、音楽が好きという気持ちを見つけて伸ばしてくれました。初めて習ったピアノは母ではなく藤田紀子先生でした。ピアノの練習より先生に会いに行くのが好きで、レッスンに行く途中に道端で咲いているお花を摘んで先生に持っていった記憶があります。ピアノ自体は不真面目な生徒でしたが(笑)。
―声楽を始められたのは?
―声楽を始められたのは?
鬼一さん 私は「音楽科がある高校にそのまま入れる学校」という母の勧めで、中学校から神戸山手女子中学校に入学しました。入学して最初の秋頃に、母から「あなたは歌うのが好きそうだし、歌を習ってみる?」と言われたのがきっかけです。当時はオペラの世界も全然知らないですし、歌を習うってどういうことだろうとすごく驚きました。でも私も変に(?)素直で、そう言われるのだったら習いに行こうかと軽い気持ちで始めました。今になって思えば、私の進路について早めに方向性を見つけてあげようという母心だったのですね。
声楽を本気でやろうという気持ちになったのは実は随分後になってからでした。神戸女学院大学音楽学部を卒業した後に、関西二期会のオペラ研究所に行き、そこで初めて大きな刺激を受けました。大学までの環境と大きく違っていて、先生方も大変厳しく、今思えばよく耐えることができたなという程でした。2年間の研修課程は、歌だけではなく演出家の先生から役の演技の指導も受け、まさにオペラの舞台に立つための勉強の場。当時はまだ歌うこともままならない上に、演技をするというのが大変で、しがみついていくのに必死でしたが、楽しくもありました。
声楽を本気でやろうという気持ちになったのは実は随分後になってからでした。神戸女学院大学音楽学部を卒業した後に、関西二期会のオペラ研究所に行き、そこで初めて大きな刺激を受けました。大学までの環境と大きく違っていて、先生方も大変厳しく、今思えばよく耐えることができたなという程でした。2年間の研修課程は、歌だけではなく演出家の先生から役の演技の指導も受け、まさにオペラの舞台に立つための勉強の場。当時はまだ歌うこともままならない上に、演技をするというのが大変で、しがみついていくのに必死でしたが、楽しくもありました。
―音楽生活の中で影響を受けたこと、またターニングポイントがあれば教えて下さい。
鬼一さん 学生の頃、試験やコンクールで歌う時は、より良く見えるように、上手に聞こえるように、ということばかりを考えていましたが、大学や研究所で学んでいく中で、先生から「作曲家が意図していることを汲み取って、それを表現するのがあなたたちの仕事です」と言われたことに目を開かされました。それからは上手く歌えることばかりを考えるのではなく、作品に込められた意図を伝えることを目指すようになりました。
また研究所時代に演出家の先生から「君たちは(舞台で)お客さんをおもてなしするのです」という、とても良い言葉をいただきました。
その二つの言葉から、お客さんに楽しんでいただく、また作品の良さをより伝えたいという気持ちが芽生えて、舞台での気持ちに変化が生まれました。今でもまだ良く見せたいという欲の方が出てきそうで、きちんと整理するにはまだまだ修行が必要ですが・・・。
―地元、三木市での思い出は?
鬼一さん 所属団体が大阪、神戸、宝塚ということもあって、これまで三木で音楽活動をする機会は多くはありませんでした。そんな中で一番思い出に残っているのが、私が住んでいた町内の自治会館でのふれあいコンサートに呼んでいただいた時のことです。近所の方に大勢来ていただき、今までで一番アットホームなコンサートでした。終了後も、こんなにお客さんと交流できるコンサートはないというくらい、皆さんとゆっくりお話ができました。
最近は、実家に帰った時に防災公園や三木山森林公園で散歩するのが好きです。静かで実家に帰った時が一番よく眠れる(笑)住んでいた頃は特別思っていなかったのですが、今はすごく良いと思います。
―現在の活動や今後の目標について教えて下さい。
鬼一さん 実は昨年娘を出産して子育てが始まったところなのです。今まで自分のことだけに時間を使えましたが、子どもが産まれてからはそれではいけなくなる、大変なことなのだなと痛感しています。本当に世のお母さんすごい! 思うように時間を割いて練習することができなかったりするのですけど、一方で、子どもがいて、子育てしながら音楽もできることが凄くありがたいことなのだと思えてきました。大変な中ですが、この状況の中でこそ生まれる表現もあるかもしれない、と自分のプラスにしていきたいと思っています。
現在は、この間のコロナ禍による制約や、出産・子育てが始まったこともあり、活動が細々になってしまっていたのですが、ようやくコロナの規制が緩和されてきましたし、子育て生活にも一定馴染んできましたので、活動への意欲が湧いてきたところです。今は母校である神戸山手女子高校と神戸女学院大学で後進の指導に当たりながら、少しずつ舞台にも復帰しているところです。まだ大きな目標というのは描きにくいですが、まずは家庭と音楽活動とを両立できるようにするのが今の目標ですね。またオペラの現場にも早く戻りたいです。現実的には子どもが小さいうちに夜の稽古に行けるかという悩みはありますが。またこの夏「0歳からのコンサート」に出演した際に、娘も客席にいたのですが、うちの娘だけが私の声を聞いて泣いて・・・。とにかく大きい音が嫌みたいで怖かったのだと思います。
―11月のプログラムについて、また抱負をお願いします。
鬼一さん 演奏曲はまず前半に、これまでに温めてきた楽曲の中から、コンサートで歌ってみたかった曲、またこれまでに歌ってきた好きな曲を盛り込んでいます。18世紀のバロック時代を代表する作曲家の一人ヘンデルから、『カヴァレリア・ルスティカーナ』の作曲者マスカーニの歌曲、イタリアの近現代作曲家ヴォルフ=フェッラーリ、そして20世紀アメリカの作曲家バーバーまで、作曲者の時代順に並べています。
そして後半は、今年生誕100年になる中田喜直さんの作品を多く入れました。最初の4曲は四季をテーマに4つの唱歌をまとめました。前半がマニアックなので、ここで懐かしいメロディーを聞いていただき、気楽にほっこりしていただけたら、また一緒に口ずさみたくなるような気持ちになっていただけたら嬉しいです。その後の楽曲は本格的な日本歌曲で、中田喜直さんというと皆さん聞きなれているのが「めだかの学校」「夏の思い出」などの唱歌、童謡だと思われますが、抒情的な素晴らしい日本歌曲も数多く作られています。歌のメロディーはわりと聞きやすいメロディーなのですが、伴奏は超絶技巧なところもあり、中田喜直さんのそういった一面も知っていただけたら嬉しいです。最後はヨハン・シュトラウス2世の歌劇「こうもり」から「故郷の調べ」。シュトラウスというとワルツが有名ですが、この曲は「チャルダッシュ」というハンガリーの舞曲の形式の曲で、最後を華やかに締めたいと思います。
最初にお話しましたように、子どもの頃に母と遊びで歌っていた曲の中に中田喜直さんの「ちいさい秋みつけた」がありました。私の歌の原点になっている、小さい頃から好きでよく歌っていた歌を、今回のふるさと三木でのリサイタルで歌わせていただける、今回のご縁に大きな感謝の気持ちを持って歌わせていただきたいなと思っています。
中央が鬼一薫さん、左が文中にも登場する藤田紀子さん、右が小巻事務局長。
2023年9月11日 神戸三宮某所にて。
鬼一 薫 ソプラノリサイタル プログラム
ピアノ/蜷川 千佳
≪第一部≫
G.Fヘンデル:オラトリオ『サムソン』より 輝けるセラフィムに
P.マスカーニ:セレナータ、花占い、月、アヴェ・マリア
E.ヴォルフ=フェッラーリ:4つのリスペット Op.12
S.バーバー:雨は降り続く、今は眠れ、ノクターン
≪第二部≫
中田喜直:さくら、夏の思い出、ちいさい秋みつけた、雪の降るまちを
さくら横ちょう、悲しくなったときは、髪、歌をください
J.シュトラウス: オペレッタ『こうもり』より 故郷の調べ
鬼一 薫(きいち かおる)プロフィール
兵庫県三木市出身。神戸山手女子高等学校音楽科、神戸女学院大学音楽学部卒業。大学卒業後、兵庫県立芸術文化センター・ワンコインコンサート、NHK-FM名曲リサイタル(公開収録)などのコンサートに出演。オペラでは関西二期会本公演「カルメン」ミカエラ役でデビュー、その他「ラ・ボエーム」ミミ役、「蝶々夫人」蝶々夫人役、「魔笛」パミーナ役、「ドン・ジョバンニ」ドンナ・アンナ役、ツェルリーナ役、「フィガロの結婚」ケルビーノ役、「ファウスト」シーベル役、「トゥーランドット」リュウ役、県民オペラ「魔法の靴」シンデレラ役などに出演。2017年12月にはイタリア リボルノのゴルドーニ歌劇場にてオペラ「イリス」に芸者役で出演(関西二期会との共同制作)。2010年に神戸女学院大学の推薦により訪米、在シカゴ日本国総領事館主催の演奏会に出演。2012年、2015年に中東オマーンにて在オマーン日本国大使館主催の演奏会に出演。第6回ひょうごアーティストサロン賞、平成29年度坂井時忠音楽賞、平成30年度神戸市文化奨励賞を受賞。これまでに植村早智子氏、松本幸三氏、斉藤言子氏に師事。
関西二期会、日本演奏家連盟、神戸音楽家協会各会員。
現在、神戸女学院大学音楽学部、神戸山手女子高等学校音楽科非常勤講師。
蜷川 千佳(にながわ ちか)プロフィール
神戸女学院大学音楽学部ピアノ専攻卒業。同大学大学院音楽研究科修了。2004 年、ローラント・バーダー指揮、ポーランド国立クラクフ室内管弦楽団と共演。 2008 年、ザルツブルクで行われるマイアミ大学主催、 声楽講習会にティーチングアシスタントとして参加。 第33回摂津音楽祭において伴奏賞受賞。現在、神戸女学院大学、四條畷学園高等学校 各非常勤講師。関西二期会、堺シティオペラ等においてオペラを中心にアンサンブルピアニストを務める。西宮音楽協会会員。宝塚演奏家連盟演奏会員。
三木労音10・11月例会(第197回)
鬼一 薫 ソプラノリサイタル
2023年11月12日(日)14:00開演
三木市文化会館小ホール
参加費 会員/会費のみ 一般/4,000円
三木労音会員へ入会希望の方は、チラシ裏の入会申込書に会費2か月分(鬼一薫ソプラノ例会から参加希望の方は10・11月分)と入会金(1,000円)を添えて、三木労音会員か事務局までお申し込み下さい。
ホームページからの入会申込みはこちら→http://www.mikiroon.com/info.html
詳細は三木労音事務局 TEL 0794-82-9775、またはメールinfo@mikiroon.comまでお問い合わせください。
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