次回例会は、2012年のステージ以来10年振りのご出演となる、ソウル&ゴスペルシンガーの新井深絵(あらい みえ)さんの登場です。
今回のブログでは、新井深絵さんのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)
今回のブログでは、新井深絵さんのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)
新井深絵さん
―新井深絵さんは前回2012年の三木労音出演以来、各地の労音に出演されておられますが、深絵さんから見られて労音のコンサートはどのような印象ですか?
新井深絵さん(以下、深絵さん) 出演させていただく度にいつも思うのですが、労音には家族のような居心地のよさがあります。会場の雰囲気が温かいのはもちろん、楽屋の準備一つひとつに細やかな配慮を感じ、バンドメンバー一同、ほっこりさせていただいた後、やる気満々でステージに挑めます。
―前回ご出演いただいてから10年が経ちましたが、この間のご自身の歩みの中で特に心に残ったことを教えて下さい。
深絵さん 実は前回の三木労音出演の年に大切な愛犬と死別して、とても落ち込みました。自分のこれからがイメージできなくなり、オリジナル曲だけはすべて形にしようと2枚のCDを同時に出版しました。そして嬉しい感想をいただく中で、自分ができることがまだあるならもう一回またがんばってみようと思いました。
また2018年に大きな交通事故に遭い、後遺症や相手との裁判で一時大変な状態に陥りました。依頼を受けたステージでも思うように声が出ず、悔しく申し訳ない思いもいっぱいありました。いろいろ諦めたり赦したりもしましたが、そんな中で自分の症状が「脳脊髄液減少症」だったことが分かり、ご縁があって広島の第一人者の先生の治療を受けることができ、みるみる回復できました。今では体も鍛えて、発声法も以前のように戻せています。最近では体を鍛えると心も元気になれることを発見しています。自分が受けた苦しみは、誰か大切な人の苦しみを分かるための経験と考えられるようになりました。支えてくれた周りの人達には感謝しかありません。今は神様にお祈りする時は「みんなが元気でありますように。世界が平和になりますように。そしてこれからも自分の役割を果たさせて下さい」としめくくります。
ここ3年のコロナ禍では世界中の人達と同じように危機に直面しました。いざコンサートをするとなると「こんな時にやるとは何か」という声もあれば、看護師さんなどからは「(感染防止対策で)出かけられないから配信で見たい、元気が欲しいからコンサートしてほしい」という声も。その時にいろんな声があるのなら、自分を必要としてくれている人の声へ心を寄せたいと思うようになり、活動を再開しました。感染対策としてオゾン発生機を20台ぐらいレンタルして会場中に置くなど費用面でも負担が大きくなり、その上でバンドメンバーや音響スタッフ等にちゃんと支払おうと思ったら公的支援を申し込む必要があり、寝ずに申請書類を作る日々もありました。
―毎年ご自身の主催で開催されているコンサート「ミヘの風」では深絵さんが指導されているキッズクワイアが出演されていますが、子供達との関わりについて教えて下さい。
深絵さん 小さい頃から幼稚園の先生になるのが夢で、教育大学の幼稚園課程を出ました。その後、自分で開いた学習塾で子供たちに英語を教える時に、英語の童謡を教材にしていたのですが、私のコンサートを聴きにきてくれた子供たちが「みいも(深絵さんのこと)の音楽(ゴスペル)がしたい」と言いだしました。子供たちには「面白いかどうかが大切で難しいかどうかは二の次」と感じていたので、そこから子供達にゴスペルを教えるようになりました。英語の歌詞の意味は「みんなのお父さんお母さんや兄弟など、大切だなと思って歌ってみて」、それだけですごく歌が変わるのです!また子供達はステージで歌って達成感を感じる度にぐんと成長します。その姿に指揮をしながら涙が出ることもしばしば。子ども達をクワイアで長年見ていると、後ろに隠れていた子がこんなにできるようになった、小さい時お兄ちゃんお姉ちゃんに甘えていた子が下の子供の面倒を見るようになった、そんな場面に立ち会えます。その時は叔母のように嬉しい。幸せをもらっています。たまに喧嘩した時も「やめなさい!」と言っても絶対やめないのに「優しい気持ち!」と言ったらパッとやめるのですよ(笑)
―ライブ、コンサート以外に人権公演にも出演されていますが、その中ではどんなメッセージを伝えておられますか?
深絵さん 学校公演では音楽と話を届けますが、子供たちには自分が思春期の時に辛かったことをどうやって乗り越えたかということを含めて話をしています。韓国人としての生い立ちや、交通事故からどういうふうに乗り越えてきたかなど。また全てのことは自分から発信している、あの人が優しくしてくれなかった、ではなく自分が先に優しくしたかどうかを先に考えることも伝えています。私のオリジナル曲『あなたの言葉』の中でも「ありがとう、ごめんね」という言葉が相手を癒すこと、相手の心を温かくすることを感じてほしくて思いをこめていますが、言葉の大切さも伝えたいです。「人権」って難しそうに感じるけど、自分のことを認めて周りの人に優しくできる、それが「人権」だと思います。そんなことを一緒に考える時間になればという気持ちでいつも挑んでいます。
―あらためて深絵さんにとってゴスペルはどういう音楽ですか?
深絵さん 私がゴスペルに出会ったのは、何をやってもうまくいかない頃でした。事故にも遭い、心も身体も弱っていた時でした。「もう一回がんばってみ。」という言葉がどこからか聞こえてきて、弱気になっていた私がすんなり一歩踏み出していました。「やってみてあかんかったら、その時考えたらいい。」とまで思えていました。それからは、がむしゃらにゴスペルについて学び、アメリカにも何度も渡りました。問題に直面しても乗り越える力もいただいたような気がします。ゴスペルに出会うまでは、ラブソングの歌詞しか書けませんでしたが、ゴスペルに出会って初めて書いた曲「サララ」は違いました。私にとってゴスペルでした。私を救ってくれたゴスペルが、今私の音楽、そして人生の基盤になっています。そして誰かの役に立つことができれば幸せです。
―12月の三木労音のステージにむけての思いを教えて下さい。
深絵さん 12月のステージには新曲を歌います。テーマは「コロナ禍で固まってしまった心と体をどうやってほぐすか」。誰かにほぐしてもらうのではなくて自分からほぐしていこう、でもどうやったらいいかわからない。ある時子ども達が、揺れて動いてリズムに乗っている姿を見ていると、「揺れたら楽しくなるのかも」と思い、自分がしんどい時に揺れてみたら、なんだか楽しくなってきて明日もなんとかなるような気持ちになりました。リズムってこんなに人の心をほぐしてくれるんや、と。そこで新曲のタイトルは『あなたに会える幸せ』でサブタイトルが「Shake it up!」(揺れろ!)。当日は皆さんと一緒に揺れて、固まった心もほぐれて優しい気持ちになれた、というようなコンサートになればいいなと思います。
新井深絵 Mie Arai プロフィール
力強い歌声と温かさ、そして笑いの絶えないステージで、多くのファンを魅了する大阪出身のソウル・ゴスペルシンガー。
幅広いジャンルの音楽をこなし、作詞作曲も手がける。
歌に込められた「勇気を出して一歩踏み出そう!」というメッセージに元気づけられる人は多い。
1999年ゴスペル音楽との出会いが彼女の人生を大きく変えた。
New YorkやChicago、Minneapolisで本場のゴスペルを体験し、人間の奥底にある力に魅せられていく。
2005年Gospel Awardsでベストソリスト賞を受賞。
2006年3月には、New Yorkでグラミー賞受賞ゴスペルシンガー“ドリンダ・クラーク・コール”の前で彼女の曲を熱唱し、ドリンダ本人から“Dorinda’s sister”だと、パフォーマンスを絶賛された経験がある。
同年4月にはカーペンターズのリチャード・カーペンターの前で歌い賞賛を受けている。
2007年、NHK「ぐるっと関西ガンバリズム」で密着撮影。
2009年には、ABCラジオ「Memories of you」の公開録音コンサートに出演。
また、グラミー賞受賞「サウンズ・オヴ・ブラックネス」プロデューサーの“ゲイリー・ハインズ”からも、その歌唱力が認められている。
2013年、4月には韓国ソウルでの公演、8月には韓国済州道主催の公演も大盛況をおさめ、2014年10月には、韓国全州ソリフェスティバルに出演。
そして2016年11月、日本最大級のCM賞であるACC賞で「クラフト賞」受賞。
2018年には、奈良県天川中学校校歌の作詞作曲を手がける。
ソウルフルな英語の曲だけでなく、聴く人の心を元気にしてくれるオリジナル曲も多数。そのため、ライブハウスでの活動のみならず、学校や他の教育関連、地域に要請されてのトーク&コンサートも回を重ねている。また、歌を通して子ども達の情操教育にも取り組んでおり、達成感に満ちた子ども達の笑顔が彼女のエネルギーの源である。 ハンデのある子ども達との参加型コンサートも積極的に行っている。
小さい頃から韓国舞踊を身につけ、韓国古謡も歌う。
2007年8月には、その韓国古謡や、ゴスペル・ソウル曲、そして子供たちと歌う「サララ(生きよう)」全7曲収録したアルバム『Mihye』を出版。2010年7月には、オリジナルだけをまとめたアルバム「あなたの言葉」が発売され、2013年には、打楽器と歌だけの「たいことうた」、様々なジャンルのオリジナルをまとめた「あなたに逢えて」の2枚同時リリースされた。2015年には韓国から渡ってきた祖母を偲んで書いた「ばあちゃんのアリラン」そして韓国のゴスペル曲「君は愛されるため生まれた」の2曲を日本語と韓国語でまとめたミニアルバム「ばあちゃんのアリラン」をリリース。そして2020年、9曲のオリジナル曲をまとめたアルバム「広がるこの世界で」を出版。
彼女の毎年恒例夏の大コンサート「Mihye(みへ)の風」には、年齢・性別を問わない多くのファンがつめかけ、泣いて笑っての時間が繰り広げられている。人生の背中を温かく押してくれるソウル・ゴスペルシンガーである。
オフィシャルサイト http://mihye-araimie.com/
三木労音12・1月例会(第192回)
新井深絵 ソウル&ゴスペルライブ
2022年12月11日(日)14:00開演
三木市文化会館小ホール
三木労音会員へ入会希望の方は、チラシ裏の入会申込書に会費2か月分(新井深絵ソウル&ゴスペル例会から参加希望の方は12・1月分)と入会金(1,000円)を添えて、三木労音会員か事務局までお申し込み下さい。
ホームページからの入会申込みはこちら→http://www.mikiroon.com/info.html
詳細は三木労音事務局 TEL 0794-82-9775、またはメールinfo@mikiroon.comまでお問い合わせください。
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