今回のほわいえでは、マリオネットの湯淺隆さん、吉田剛士さんのインタビューをご紹介します。
聞き手/小巻健(三木労音事務局長)
湯淺 隆さん 吉田剛士さん
―まずはお二人それぞれの担当される楽器の特色を教えて下さい。
湯淺隆さん(以下湯淺さん) ポルトガルギターはポルトガルのファドというジャンルで使用される複弦6コースの12弦ギターです。弦はスチールです。基本的には哀愁のある音色が特徴ですが、弾き方により絢爛豪華な表現も得意です。独断で私はその奏法を「南蛮ぎたるら」奏法と呼んでおります。
普通のギターは、いわゆるクラシックギターです。奏法はあえて言えばラテンの技法に準じますが、私ども独自の奏法もお楽しみいただけるかと思います。
吉田剛士さん(吉田さん) マンドリンはイタリアで発展した小型の撥弦楽器です。金属弦の可憐な音色は広く愛され、世界中の様々な音楽ジャンルで演奏されています。日本では大人数での合奏がポピュラーで、その演奏人口は数万人とも言われ世界一を誇ります。
また、同属の低音楽器マンドリュートとポルトガルギターのデュオという演奏形態はマリオネット独自のものです。
―以前三木労音にお越しいただいたのが2004年ですが、それ以降の活動で特に心に残っておられること、そのエピソードを教えて下さい。
湯淺さん 私の弾くポルトガルギターは、「南蛮」というキーワードを中心にすえています。東洋(日本)であり西洋(ポルトガル)でもある「南蛮」ゆかりの史跡や、そのご縁を得た機会や場所での演奏は感慨深いものがあります(旧ポ領マカオ世界遺産、国宝/大浦天主堂、世界遺産/石見銀山、種子島/鉄砲まつり、大分/宗麟公まつり、等々)
2013年には、石見銀山文化賞特別賞、2015年には、第2回ジョアンナ・アブランシェス・ピント賞をポルトガル大使館よりいただきました。来年は南蛮文化発祥都市・大分の国民文化祭に参加の予定です。
吉田さん 2006年に私どものオリジナル楽曲を演奏するマンドリンオーケストラを結成し、マンドリン合奏としての新しいレパートリーを創出するとともに、全国のマンドリン・ギター愛好家に声を掛け、「南蛮」ゆかりの地への大合奏ツアーなどを行ってきました。中でも約180名が参加したマカオ世界遺産大合奏ツアー(2011年)の成功は一番大きな思い出です。
―マリオネットの魅力の大きなひとつは、どこか懐かしく哀愁を持ったオリジナル楽曲の数々だと思っていますが、作曲される際に変わらずテーマにされている事がありましたら教えて下さい。
湯淺さん その音楽を聴く事で、五感が活性化するような曲を作りたいと思っております。情景が浮かんだり、匂いが想い出されたり、思いもしない何かに気づいたり・・・。
「懐かしい哀愁感」とは、いっぱいいっぱいに張りつめた現在から、少しずれて、自身の内部に別次元を認識した時に、胸に広がる「身体内旅情」とでもいう体験ではないでしょうか?「旅」は若返りの特効薬と聞いたことがありますが、音楽を聴くことで、「ここ」ではない「どこか」を、ふと感じることのできる「小旅行」は、日常をさらに活性化させる効力があるのではないかと思います。そんな「束の間」を、しばし遊んでいただければと思います。
吉田さん 同じような話になるかもしれませんが、良い楽曲は人をどこかに連れて行ってくれます。人は自分にとっての「懐かしさ」を触発されることで何か漠然とした記憶をたどり始めるのかもしれません。聴いているうちにいつの間にか「演奏を鑑賞する」次元から意識が離れて「音楽の世界に浸る」ような体験があります。数分の曲を聴く間に無限の時間を感じることができればどんなに素晴らしいことでしょう。そんな曲を作りたいと願っています。
―マリオネットを結成して20年以上が経たれたそうですが、お二人それぞれの変化したところ、また結成当時から変わらないことを教えて下さい。
湯淺さん 体重は増えましたが~(笑…。)
ひとつの曲を作る場合でも、いろんな影響を受けていることを自覚的に理解できるようになりました。それは、今あることが、これまで出会った方々やご縁の上にあるのを理解し感謝するのと同様の感覚です。音楽という仕事(労働)を続けられたことの実生活感は、ひとつの曲の楽想に大きく影響していると思います。
変わらないことは、もう少しうまく弾けるかもしれないということを、いまだに信じていることぐらいでしょうか(再、笑…。)
吉田さん 仕事として音楽に取り組み続ける過程で、他者への理解や感謝の心はようやく人並みに育ってきたような気がします。人間、音楽とも少しでも良い方向に変化させていきたいものです。
一方、メインで使用している楽器は20年前と変わりません。ただし、弾き手と同じく経年変化により音の出方も容貌も変化してきたように思います。
―最後に三木労音の会員へメッセージをお願いします。
湯淺さん 長らくにわたり、お世話になり、心より感謝しております。ネット社会になり、音の情報は猛烈に氾濫し、多くのものは手軽に入手できるようになりました。逆に、だからこそ「生」の「手作り」のものは、いっそう重要になってきていると思います。労音のイベントは、その成立の過程自体が、血の通った「ものづくり」であると思います。今から、懐かしい仲間に会うような気持ちです。よろしくお願いいたします。
吉田さん 上に同じです。筋金入りの聴き手である皆さまにご満足いただけるよう頑張って演奏いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
マリオネット プロフィール
日本におけるポルトガルギターのパイオニア・湯淺隆と、マンドリン界をリードする吉田剛士によるアコースティックユニット。独特のオリジナル音楽の創作を中心に、ファドやポピュラー音楽まで幅広い音楽活動を行なっている。
映画、TV、CM、バレエ・演劇などの音楽を数多く担当。デビューCD『ぽるとがる幻想』以降、計15枚のアルバムを発表。『徹子の部屋』『スタジオパークからこんにちは』を始め、多数のテレビ・ラジオに出演。全国各地でのライブ活動の他、豪華客船「飛鳥Ⅱ」ワールドクルーズでの演奏実績も重ねている。2010年より湯淺がマカオ観光局音楽大使。2013年『第6回石見銀山文化賞・特別賞』受賞。同年、日本のファド史をテーマとした2枚組CD『Zipangu Fado』をプロデュース。2014年10月より大分むぎ焼酎「二階堂」のTVCMが3年連続全国放送中。2015年ポルトガル大使館より『ジョアナ・アブランシェス・ピント賞』を受賞。2016年高知県梼原町より『ゆすはら未来大使』に任命。
湯淺 隆(ポルトガルギター奏者)
14才でギターを始め、日本ギター音楽学校を経てクラシックギターを小野剛蔵氏に師事。ポルトガルギターを巨匠アントニオ・シャイーニョ氏、アマリア・ロドリゲスのバックギタリスト、カルロス・ゴンサルベス氏に師事。ファド(ポルトガルで生まれた民衆・大衆歌謡)だけにとどまらず、日本人ならではの独自の境地「南蛮ぎたるら」を展開中。マリオネットとして、オリジナル曲を中心に音楽活動を行なう傍ら、作詞・作曲家として楽曲提供も積極的に行っている。「南蛮文化」「ポルトガル」という文脈の中でも確かな評価を得ている。
吉田剛士(マンドリン奏者)
15才でマンドリンを始める。川口雅行氏、ドイツ国立ヴッパータール音楽大学にてマーガ・ヴィルデン・ヒュスゲン女史に師事、同校演奏家資格試験を最高点で卒業。NHK洋楽オーディション合格。マリオネットとして新たなマンドリン音楽の確立に力を注ぐ一方、マンドリン専門誌「奏でる!マンドリン」監修、各マンドリンコンクール審査員を務めるなど普及発展にも貢献。マリオネット作品を専門に演奏する「マリオネット・マンドリンオーケストラ」、全国のマンドリン愛好家100名以上集めて組織する「ZIPANGUマンドリンオーケストラ」を主宰。
ホームページ http://www.asahi-net.or.jp/~qn7y-umi/
三木労音第158回例会
ポルトガルギターとマンドリンによる、時空を超えたノスタルジア
マリオネット コンサート
2017年5月17日(水)19:00開演(18:30開場)
三木市文化会館小ホール
入会希望の方は、チラシ裏の入会申込書に会費2か月分(マリオネット例会から参加希望の方は4・5月分)と入会金(1,000円)を添えて、三木労音会員か事務局までお申し込み下さい。
ホームページからのお申込みはこちら→http://www.mikiroon.com/info.html
詳細は三木労音事務局 TEL 0794-82-9775、またはメールinfo@mikiroon.comまでお問い合わせください。
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