2014年3月17日月曜日

【次回例会紹介】たった1台の電子楽器(エレクトーン)で奏でる、壮大な音楽の世界 神田将さん(エレクトーン奏者)

次回例会は、エレクトーンでクラシック音楽を奏でる稀有な演奏家・神田将(ゆき)さんの登場です。今回のブログ記事は、神田さんにメールインタビューでお答えいただいた記事をお楽しみ下さい。
聞き手/小巻健(三木労音事務局長)




Q1まずはエレクトーンを始められたきっかけを教えて下さい。

神田将さん(以下、神田さん) 私は子どもの頃から、ピアノでクラシック音楽を奏でることと、オーケストラ作品のレコードを聞くことが大好きでしたが、どちらかというと、さまざまな楽器が重なり合うオーケストラのハーモニーにより強い魅力を感じていました。指揮者になることを夢見た時期もありましたが、それでは自分で音を奏でることができません。ある日出会ったエレクトーンは、私が子どものころに知っていたものから格段の進歩を遂げており、これならひとりでオーケストラの演奏が可能だと感じたのがエレクトーンを選んだきっかけです。
また、私は音楽の専門教育を受けることより、人生経験の旅を選びましたので、伝統あるピアノや指揮の世界で頂点を極めることは困難だと思っていました。しかし、エレクトーンは、まだ誰ひとりとしてしなかったことを、私が成し遂げられるかもしれないという大きな希望をも与えてくれました。

Q2電子楽器エレクトーンでクラシック音楽を奏でるのは珍しいことと思いますが、その魅力、可能性を教えて下さい。

神田さん エレクトーンとクラシック音楽という組み合わせが、どうもピンとこない方はたくさんいらっしゃると思います。ムード音楽やBGMのイメージが強いエレクトーンですが、近年は開発技術の発達とともに、ピアノやヴァイオリンなどの楽器と遜色ない繊細な表現が可能になり、クラシックコンサートにもじゅうぶん通用する楽器に進化しました。
しかし、まだ歴史の浅さや既成概念に影響され、なかなか広がらないのが現状です。それでも、エレクトーンに情熱を注ぎ、将来の演奏家を夢見る若者は増え続けています。そうした若者たちに活躍の場を残すためにも、私は道なき道を切り拓き続けなければなりません。エレクトーンを弾くと決めた20年前には、ほとんど前例がないために苦労と挫折の連続でしたが、やっと成果が形になってきたところです。クラシック音楽の世界で生き残るために必要なものをひとつひとつ築き上げながら、今日も努力を積み重ねています。

Q3音楽について、中でもクラシックについてのお考えを教えて下さい。

神田さん 音楽は、そのジャンルを問わず、私たちに深い感動を与えてくれるものです。クラシック音楽には堅苦しいものというイメージもありますが、ちょっとしたヒントを得てから聞けば、不思議なほどすんなりと心に入り込んで来てくれるものです。古いものでは数百年もの昔から親しまれ、その間ほぼ毎日、世界のどこかで演奏されているのがクラシック音楽です。無数の弾き手による演奏を更に膨大な人数が聞くことで作品は命を宿し、そこに私たちの生きた証が刻まれ、また次の世代へと受け継がれていきます。
こうした作品を演奏するに当たり、私は常に大きな責任を感じています。作品の価値をおとすことのないよう、よい演奏をするのは当然のことですが、作曲家が作品に込めた思いを、演奏でどこまで再現できるかという点に全神経を注いでいます。そこに自己表現が加わる隙は一切ありません。優れた作品には、たった一度の人生ではつかみきれるはずもない壮大な情報が詰まっています。たとえばそれは困難を生き抜く知恵だったり、愛の素晴らしさなど、とても言葉では語り尽くせないものばかりです。
私がエレクトーンでクラシックを弾き始めた当初は、オーケストラの再現で満足していたかもしれません。しかし、今は音で繕う外観よりも、音楽の本質をお伝えすることこそが私の仕事だと考えるようになりました。

Q4今回のプログラムの魅力について教えて下さい。

神田さん 実は、たくさんあるレパートリーの中からどの曲をお届けしようかと、さんざん悩みましたが、今回は初めてお目に掛かる方々が多いことと思いますので、よく知られた親しみやすい作品ばかりを揃えました。私自身も大好きな曲の数々を、ちょっといいお話を交えながらお届けいたします。
このプログラムに限らず、私が演奏する作品は、すべて私自身が編曲を行っています。オーケストラの総譜を基に、そのエッセンスを損ねることなく、ひとりで演奏可能な形に集約する作業には、非常に神経を使います。編曲が完成すると、エレクトーンの音色の組み合わせデータを作成します。演奏中に次々と音色を変えていくわけですが、これらの細かい設定もまた膨大な作業です。弾くと決めた曲の総譜を手にしてから、ここまでの段階に至るまで1カ月ほど。それから必死の稽古を重ねてやっとお披露目というわけですが、その際にもプログラムチェンジミスや打鍵の雑音などが生じないよう、他の楽器なら無縁の注意を払う必要があります。たったひとりで数十人分の演奏と精神性を発揮しなければならないだけでも容易でありませんが、こうした意味でも人類史上最も複雑でリスクの高い楽器だと言えるでしょう。そんなわけですので、お披露目での演奏など正直とても聞けたものではありません(笑)。皆様に自信を持ってお聞かせできるようになるには、その日から最低10年は掛かりますが、今回のプログラムはじゅうぶんに熟成期間を経たもの揃いですので、ぜひおおいに期待して下さい。

Q5会員のみなさんへメッセージをお願いします。

神田さん 今回は、ご縁があって三木労音の皆様にエレクトーンで奏でるクラシック音楽をお聞きいただけることとなり、たいへん光栄に思っています。いつも優れた公演をご覧になっている皆様ですから、きっとエレクトーンの素晴らしさにも深く共感して下さることでしょう。私たち演奏家はお客様に何かを与えているわけではありません。音楽はもうすでに皆様の心の中に生きているのですから、私たちはそれをちょっとくすぐって目覚めさせるだけです。最初は不思議な楽器を演奏する私を好奇心でご覧になっていた皆様にも、帰る時には幸せいっぱいの表情になっていて欲しい。そんな願いを込め、心を尽くして演奏いたしますので、どうか、皆様お誘い合わせの上ご来場下さい。お会いするのを楽しみにしています。


神田将 YUKI KANDA プロフィール  http://www.yksonic.com/

1967年生まれ。東京都出身。たった1台のエレクトーンでフルオーケストラに迫るサウンドを奏で、電子楽器の常識を覆したエレクトーン奏者。とくにクラシック作品の演奏を得意とし、カザルスホールなどのクラシック音楽専用ホールでのリサイタルを2006年以来続ける。
毎年、100回を超えるコンサートに出演しており、一音ごとに魂のこもった演奏と心に沁み込むトークを織り交ぜたコンサートスタイルで、クラシックファンのみならず、幅広い層から好評を博している。2001年10月には、IMC(国際音楽評議会)総会の初の日本開催にあたり東京芸術劇場で催された記念演奏会に出演し、世界各国の音楽関係者から高い評価を受けた。
2009年、2010年には仙台クラシックフェスティバルと中国上海国際芸術祭に出演、これらはエレクトーン演奏家として史上初の快挙となった。また、ソロの演奏活動にとどまらず、ソプラノのサイ・イエングアンや二胡の姜建華をはじめとしたクラシック界のトップ・アーティストとも数多く共演し、その卓越した音楽性は世界的オペラ演出家ミヒャエル・ハンペにも絶賛された。公演の音楽監督、作編曲、演出の手腕にも定評があり、一流演奏家たちからの信頼も厚い。
そのほか、全国の小中学校への訪問コンサートを通じ、子供たちに音楽の真価を伝えるための活動も積極的に行なっている。

三木労音3・4月例会神田将エレクトーンリサイタル
2014年4月25日(金)19:00開演 三木市文化会館小ホール
新入会員大募集中!お申し込みは三木労音TEL0794-82-9775、もしくはホームページhttp://www.mikiroon.comからも入会できます。

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