次回例会は、日本の伝統楽器の魅力を現代に発信すべく演奏活動をされているグループ「和楽器アンサンブル真秀(まほら)」にご登場いただきます。
今回のブログでは、真秀メンバーへのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)
今回のブログでは、真秀メンバーへのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)
和楽器アンサンブル真秀(まほら)
写真左から、青木滉一郎さん、山形光さん、鳥越菜々子さん、青木礼子さん
―グループ結成のきっかけは?
青木礼子さん(以下、礼子さん) 私は東京藝大卒業後、そのまま大学で働いていたのですが、いざ演奏の場となると何もありませんでした。他の卒業生が学外で活躍するのを見て、私も演奏する場を作っていきたい、でもこれまでアンサンブル中心の勉強しかしてこなかったので、一人ではどうしようもない。そこで仲間を集めて何か一つ旗を上げたいということでこのグループを結成しました。
山形光さん(以下、山形さん) 私は礼子さんと大学の同期生で、鳥越さんは後輩。この三人は結成からのメンバーです。そこに尺八の青木君が7年前から合流して、現在はこの四人がメンバーです。
礼子さん さらに3年ぐらい前から邦楽打楽器奏者の冨田慎平さんにサポートをしていただいています。古典曲から民謡、アレンジものまで、私がこれまで出会ってきた中で彼ほど多様なリズムを叩ける人はいないと思います。年齢も私より上で、ハチャメチャな私たちをまとめてくれる、頼れるお兄さんのような存在の方です。
―“まほら”は「まことにすぐれた場所」という意味だそうですが、命名に何か意気込みはありましたか?
礼子さん 実はそんなに深く考えずにつけてしまったのが正直なところです。この「真秀」という命名は、現在のチームになるもっと前、大学在学中に同期生でその時だけに作ったチームの名前でした。それも「“まほら”って語感が可愛いね」というだけで付けた名前です。そこから当て字で「真秀」と。こんな漢字当てちゃって大丈夫かなという不安はありました。
山形さん 活動を始めた最初は、J-POPの邦楽器カバーでたくさんの人に知ってもらえましたが、実はメンバー全員が和楽器の古典をきちんとやっていて、その上で若い人たちにも馴染んでもらえるようなちょっと楽しいこともやっている、そんな意味付けでグループ名の説明をしています。
―メンバーお一人ずつ、演奏家を目指されたきっかけと影響を受けたアーティストを教えてください。
礼子さん 私は祖母、母とお箏をやっている家で、私も手習いを始めました。最初は続けていくつもりはなかったのですが、祖母が喜んでくれるのと、他にこれということもなかったのと、両親や家族に大学まで行かせてもらってしてきたものを、ここでやめてしまうことはもったいない、というのが動機です(笑)。
影響を受けたアーティストはたくさんあるのですが。普段聴く音楽はアイドルの音楽で、お箏は聞かないですね(笑)
山形さん 私は母が趣味でお箏をやっていて、私も小さい頃から一緒に習っていました。高校生の時に舞台、それも裏方のお仕事に興味があって、そういうことも勉強できるかなと思い藝大に関心を持ち、自分が出来ることはお箏なので、お箏で入学しました。そこで学科の同級生と4年間勉強してきたことを、卒業と同時に終わらせてしまうのはもったいないなという気持ちに私もなり、また若い人たちに何かを伝えていきたいって思いも芽生えてきていた時に、礼子さんからお誘いを受けて、楽しそう!と参加して、今に至っています。
私も礼子さんと同じで、普段から邦楽ではなく、ジャニーズとかアイドルの音楽ばかり聴いています(笑)。でもJ-POPの曲の中でも和楽器が入っている曲も結構ありますね。それと知らないと和楽器が入っていると気付かない方も多いと思うので、音を知ってもらう、楽器を知ってもらうところに自分たちのやっていることが繋がればいいなと思っています。
鳥越菜々子さん(以下、鳥越さん) 私は4歳ぐらいの時に、お箏の先生をしている叔母に習い始めました。地元がお箏が盛んな福山市で、全国コンクールも開催されていて、私も小学1年生から出場していました。すごく上手な方を見ていて私も賞が取れるようになりたいと思い、続けるきっかけになりました。最初は予選落ちが続いていましたが、ある先生に習うようになってから賞をもらえるようになり、藝大を目指すようになりました。
真秀には大学院の時に声をかけていただいて参加しました。私は古典曲はあまり得意ではなかったので、それでやっていきたいという気持ちはあまりなかったところ、礼子さんから自分たちで曲を作ったりということもやろうよ、と声をかけていただき、私もそれが一番やってみたいと思っていたことだったので、迷わず参加しました。
私が一番影響を受けた方は、今はもうお亡くなりになられた箏の演奏家の深海さとみ先生です。どうしてもその先生に習いたくて、頼み込んでお稽古をつけていただきました。先生のおかげで藝大に行けて今があるというくらい、私にとって大切な方です。
青木滉一郎さん(以下、滉一郎さん) 私も他の3人と同じで、子どもの頃に家に楽器があって家の人がやっていたので、主体的に始めたわけではないです。中高は普通校でしたが、人と違うことをやるほうが面白そうと思い、藝大に入学しました。それまで私の周りには尺八をやっている同年代の人というのがほとんどいなかったのですが、大学では同年代のいろんな人達と交わる中で刺激を受け、尺八の面白さをより感じるようになりました。
山形さん 私たちも同じで、習っていた教室では自分が一番若くて上はみんなおばちゃんたち、間の世代がいない、みたいな中でずっとやってきたので、同世代の人と切磋琢磨していく楽しさは藝大に入ってからなのです。合奏でも色々意見を交わしながら一緒に作っていく楽しさを知ったことで、これからも続けていこうという気持ちになったのは大きかったですね。
滉一郎さん そして学生の時に7歳年上だった礼子さん達に誘われて、真秀に参加しました。
影響を受けたアーティストは・・・好きなミュージシャンはたくさんいますが、影響となると何でしょう?
山形さん 彼のおじいちゃんは人間国宝。
滉一郎さん ま、それを影響と言えば影響なんですけど。自分が演奏する時に思い浮かべるのは、例えばマイルス・デイビスとか。彼もちょっと人と違ったことやってやろうというような変な人だし(笑)、別に楽器が特別上手いわけでもなかったのに、ちょっと変わったことをやって目立つ、みたいな感じが結構好きで、高校生の頃からすごく聴いていて影響を受けていると思います。
礼子さん そういえば、私は宇多田ヒカルかもしれない(笑)。一番よく聴いていて、歌というより楽曲のサウンドやバックに入ってる音を、自分がアレンジする時に意識しています。
滉一郎さん 真秀の今までやってきた曲は、基本的には鳥越さんと礼子さんが編曲をしているのですが、2、3曲だけ僕がやったことがあり、毛色の違うレパートリーになっています。YMOの「東風」という曲とか。YMOも好きで高校生の頃に結構聴いていました。アイドルを聴いているという感じではなかったです(笑)。
―真秀といえばYouTube動画の他ジャンルの邦楽器アレンジの演奏が特徴ですが、これを始められたきっかけは?
礼子さん まだYouTubeが一般的でなかった頃、今では有名なヒカキンさんが動画を作り始めたあたりから、私はいろんな動画を見ていて、これで宣伝したらいいんじゃないと思ってみんなに相談すると、じゃあみんなが知ってるような曲で一回やってみようと。それが2016年でした。もちろん当時すでに邦楽演奏の動画をやっておられる方もありましたが、自分達ならもっと面白いものが出来るんじゃないかという、20代の謎の自信がありました(笑)。
最初の楽曲は「ルパン三世」でした。当時すでにお箏のアレンジの楽譜も出ていましたが、自分の頭の中でアレンジが浮かんだので、私にとって人生で初めてのアレンジに挑戦。既存のアレンジを、もっとかっこよく、原曲の良さを失わないようにと研究したことが始まりでした。
その後も様々なアレンジをYouTubeで公開してきましたが、すごいラップだったりとか、音圧が大きいものは、邦楽器だけだと勢いが出ないのでなるべく避けるようにしてます。あと、再生数を伸ばすことだけを考えたら違う選曲も考えられるのですが、どうしても「このメロディーをお箏で弾きたい」が優先してしまい、力をいれて作った割に再生数が全然伸びないという曲も(笑)
最近、鳥越さんが編曲した「戦場のメリークリスマス」の楽譜を出版しましたが、今後こうしたアレンジ作品の出版も考えています。
―YouTube動画では狐のお面をつけて演奏しておられますが、あれはどういった意図からですか?
礼子さん 当初は師匠にバレるといけないからお面を被っているのかとよく言われましたが(笑)、これはただ撮影の際の手間を考えたものです。私達、お金もなかったので、野外で撮影する際にお化粧もしっかりしてとかできなかったので(笑)。
あと、たまにテレビ撮影があった時にも自分の顔が映るのがストレスで(笑)。それに箏はずっと下を向いているから暗さが出てしまいますしね。そういったことを相殺するために被ぶったというわけです。インパクトもちょっとは考えましたけど、そちらよりも撮影を簡易に出来るようにというのが実際の理由です。でもデザインについては少し絵心もあるので、自分で全部描きました。
山形さん アマゾンで買った、ただの真っ白いお面に、礼子さんがデザインをした模様を塗装して、目のところはちょっと高級なストッキングを貼って目が見えないようにするなどして作った、完全手作りオリジナルお面です。
―真秀で今後目指されていることは?
礼子さん 来年で結成して10周年となり、これまでいろんな経験を積んでくることができましたので、これからは邦楽家の人たちにももっと認めていただけるような、もっとプロフェッショナルなチームになっていきたいと考えています。またもっといろんな場所で活躍できるようにもなっていきたいです。
活動を始めたての頃、それこそYouTube動画がバズって、お客さんはそれを聴きにきてくださったのに古典ばかりを演奏してお客さんがすっといなくなったという時期もあって(笑)。だけど、続けている中で古典の経験も積み、技術も上がってきていますので、ライブであろうが何であろうが、そこへ来てくださったお客さんにしっかり古典も聴いていただく、そういうことはやっていこうと思います。
―最後に9/28のコンサートの聴きどころや、抱負をお願いします。
礼子さん 結成から今までの間でメンバーも入れ替わるなど、紆余曲折もありましたが、今ようやく演奏面でも精神面でも安定してきました。私達の演奏からこの間の歴史を感じ取っていただけたら嬉しいなと思います。これまでの「お面を被ってちょっと不思議な楽しいことをやってるグループ」から、一人一人がしっかり積み上げてきた経験を持ち寄ってアンサンブルをしているという面白さも感じ取っていただけたら嬉しいです。
鳥越さん アレンジにも力を入れています。お箏では曲ごとに琴柱(ことじ)を動かして調子を変えていまして、その間の時間をトークで繋いだりしていたのですが、今回はいくつかの曲をメドレーにしていまして、曲調が変わるごとに弾きながら調子を変えるというテクニックを盛り込んでいます。私達がこれまでやってきた中で編み出した技で、これもぜひご覧ください。
滉一郎さん 今回のステージでは箏、尺八以外にもいろんな和楽器が登場しますので、それも楽しんでいただければ嬉しいです。
山形さん 尺八も曲によって、また一曲の中でも途中で持ち替えたりされることもありますね。
礼子さん その辺りの面白さを曲間のMCでもお伝えできるよう、がんばります!
※このインタビューは真秀の皆様のご協力のもと、7/29にZoomにて実施しました。
和楽器アンサンブル真秀 プロフィール
“まほら” 「まことにすぐれた場所」意味をし、古事記や万葉集に用例のある和詞。まほろば。
「和楽器アンサンブル 真秀」は、日本の伝統楽器である箏・三絃・胡弓・尺八・邦楽打楽器の魅力を現代に発信するべく、東京藝術大学音楽学部邦楽科を卒業したメンバーによって2016年から活動開始。
古典音楽の「まほらな音世界」を伝承する一方で、伝統楽器を深く理解したメンバー自身が作・編曲を手がけ、楽器の可能性を拡げている。
全国各地はもちろん海外でも、数十人~数千人規模の会場まで、多様な演奏活動を展開。
また、自身による作・編曲作品の演奏動画をYouTubeに公開中。動画の総再生回数は1800万回以上。
2020年~2025年までに発表したアルバム・EP全作品がTunes Core 音楽配信インストロメンタル部門にて世界ランキングトップ10入り,2024年7月-Primavera-がTunes Core ウクライナ総合トップアルバム部門にて1位獲得。
ーやまとは國のまほろばたたなづく 青垣山隠れる山としうるわしー
「まほら」とは万葉集にも見られる言葉で「真秀」と書き、真に秀でたという意味になる。
ホームページ https://www.mahora-knkn.com/
幼少より箏・三絃を祖母である宮城道雄直門 佐藤芙美子、藤木豊乃に師事。東京藝術大学邦楽科生田流箏曲専攻卒業。在学中に常英賞、卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞受賞。同大学大学院音楽研究科修士課程修了。大学院アカンサス音楽賞受賞。同大学にて非常勤講師を務める。全国高校生邦楽コンクールにて優秀賞、リスナー賞受賞、2016年自身初の作曲作品が和楽器作曲コンテストにて入賞。アメリカ、ロシア、中国などで海外公演を行い岐阜県交響楽団と共演、ソリストを務める。NHK大河ドラマ等多数の番組にて出演・音楽提供。現在、宮城社師範、ドルトン東京学園和楽器教育講師、森の会、日本三曲協会会員。主な真秀ver.編曲作品【ルパン三世のテーマ】【アイドル】【残響散歌】【群青】【ダンスホール】
山形 光
幼少期より宮城社大師範・田中佐久子氏、後に宮城社大師範・矢﨑明子氏に箏・三絃を師事。東京藝術大学音楽学部邦楽科生田流箏曲専攻卒業。現在は東京・大阪を中心に全国で演奏会・コンサート・学校公演・ワークショップなどにて活動、宮城社大師範、森の会・日本三曲協会・若水会、各会員、和楽器オーケストラあいおいメンバー、都立板橋有徳高校箏曲部講師。
鳥越菜々子
筑紫会師範。東京藝術大学音楽学部邦楽科生田流箏曲専攻卒業。同大学院修士課程修了。 第22回全国小中学生箏曲コンクール中学生の部 最優秀賞並びに牧本賞受賞。第6回岡山芸術文化賞準グランプリ受賞。第20回くまもと全国邦楽コンクール 優秀賞受賞など数々のコンクールで賞を受賞これまでに、村本歌弘、松下知代、杉本節子、深海さとみ、の各氏に師事。筑紫会箏曲師範及び準優秀賞受賞。筑紫会三絃師範及び最高位の優秀賞受賞(芸名:歌菜)。現在、筑紫ひなづる会、深海邦楽会、森の会、同声会に在籍。
主な真秀ver.編曲作品【戦場のメリークリスマス】【春よ、来い】【炎】【名探偵コナンのテーマ】
青木滉一郎
人間国宝である二代青木鈴慕(鈴翁)を祖父に、三代青木鈴慕を父に持つ。東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院音楽研究科修了。学部卒業時には皇居内の桃華楽堂にて御前演奏。ロシアや中国での文化交流演奏、NHK「古典芸能鑑賞会」等メディア出演多数。市川市文化振興財団第28回新人演奏家コンクールにて優秀賞受賞。令和元年度文化庁新進演奏家研修生。青山財団育成支援事業奨学生。2023年第一回青木滉一郎尺八演奏会を開催。2024年第29回くまもと全国邦楽コンクール 優秀賞受賞。よみうりカルチャー錦糸町にて尺八教室開講中。
冨田慎平(サポート)
洗足学園音楽大学音楽学部音楽科打楽器コース卒業。
在学中に現代音楽協会主催「現代の音楽展」、ドイツ「オストフリーストランド音楽祭」、サントリーホール主催「レインボー21デビューコンサート」などに出演。
またこれまでNHK-FM「日本の民謡」「民謡を訪ねて」、NHK「民謡魂」「うたコン」、NHK-world「Blends」、テレビ東京「年忘れにっぽんの歌」「おはスタ645」、BSテレビ東京「徳光和夫の名曲にっぽん」、日本テレビ「Dr.倫太郎」、フジテレビ「武器はテレビSMAP×FNS27時間テレビ」、読売テレビ「猿ロック」などに出演。オーケストラアジアメンバー、特定非営利活動法人 日本音楽集団 2022年より正会員
三木労音8・9月例会(第208回)
和楽器アンサンブル 真秀(まほら)コンサート
2025年9月28日(日)14:00開演
三木市文化会館小ホール
三木労音会員へ入会希望の方は、チラシ裏の入会申込書に会費2か月分(和楽器アンサンブル真秀例会から参加希望の方は8・9月分)と入会金(1,000円)を添えて、三木労音会員か事務局までお申し込み下さい。
ホームページからの入会申込みはこちら→http://www.mikiroon.com/info.html
詳細は三木労音事務局 TEL 0794-82-9775、またはメールinfo@mikiroon.comまでお問い合わせください。
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