2019年8月18日日曜日

【次回例会紹介】6人の個性の乱反射から生まれるサウンド、世界中の音楽を内包するインストバンド!―シベリアン・ニュースペーパー(バンド)

次回例会は、6人組のインストゥルメンタルバンド、シベリアン・ニュースペーパーにご登場いただきます!
今回のほわいえでは、メンバーへのインタビューをご紹介します。
聞き手 小巻健(三木労音事務局長)

シベリアン・ニュースペーパー



左から、阿守孝夫さん(ギター)、土屋雄作さん(ヴァイオリン)、山本周作さん(コントラバス)

―まずはバンド名の由来と、結成のいきさつについて教えて下さい。

阿守さん 最初にこのバンドを作る時に、日本から世界のどこにでも飛び出していけるような音楽をしたいと思って作ったのです。それで、「シベリア」という異国情緒のある言葉を選びました。「シベリアン・ニュースペーパー」という、語呂もいいですし。元々念頭にあったのが、例えばモントルージャズフェスティバルのような、世界中から実力者が集まるステージに出たいという思いがありまして、それまでしていたバンドを解散させて、そういう世界を目指していける、例えていうなれば甲子園目指せるメンバー(笑)に集まってもらい結成しました。
新しいメンバーを集めるにあたって一番最初に念頭にあったのはヴァイオリンの土屋君でしたね。僕が前にやっていたバンドで、ある時に彼にサポートで出てもらったのですが、彼が登場したことによって会場がすごく盛り上がったのですね。こういうのを僕は持ってないと思い、必ず欲しいと思いました。
そして、僕と藤田、真鍋、平尾は、実は高校時代にバンドをやっていた仲間で(香川県三豊市)、彼らは僕のことをよく知ってくれているので、昔コント、じゃないバンド(笑)を組んでいた、ノリもツッコミも分かっている旧知の友に協力を要請しました。

左から、平尾正和さん(パーカッション)、真鍋貴之さん(ギター)、藤田一宏さん(ピアノ)

藤田さん 高校時代に一緒にやっていた仲間が、それぞれ香川を出て関西とか関東でそれぞれ別のバンドをやっていましたが、期間をおいてまた戻ってきたという感じです。
実はシベリアンには僕が最後に入ったのですが、ある日突然阿守から電話がかかってきて、「2、3週間後のライブでピアノが要るから、音源と楽譜を送るのでよろしく」って(笑)。届いた音源にピアノが入っていて、「OK。これをコピーしとくわ」と言ったら「いやコピーじゃなくて、お前のものを作ってこい」って、「えっ、全部無視するの?」と聞いたら「全部無視しろ」(笑)。
もう一人のメンバーの山本は、僕が昔勤めていた音楽関係の学校で先輩だった人です。ある日山本の家に行った時に、そこが、阿守が当時住んでいた家のすぐ近くだったので紹介したのが最初の出会いでした。阿守がシベリアンを結成する際に、コントラバス(コンバス)のメンバーが欲しいと聞き、山本の家にコンバスが転がっていたのを思い出して声をかけました。

山本さん 元々僕はギターを作る職人だったのですが、実はコントラバスは楽器の構造を調べるために買っただけで、練習はしたことがなかったのです。それを見られて声がかかり、弾いたことないけど面白そうなんで頑張ります、と加入しました。

藤田さん 音楽関係の学校でスタッフをしていたのがもう20年ぐらい前。その時に山本と阿守を、家が近かったからと言う理由で紹介して、そこから10年以上が経って阿守と土屋が出会って、その時に彼らの中で全部つながっていったという感じです。

―シベリアン・ニュースペーパーの音楽は、様々な国の音楽が融合しているような、とてもユニークな作りになっていますが、作品づくりやサウンド作りのポリシーを教えて下さい。

土屋さん 僕らは、誰かが作曲してきたものをみんなで演奏するということはしていないのです。例えば誰かがこのメロディーを弾きたいと作ってきたとします、じゃあこれ曲にしてみましょうかとみんながそこに乗っかっていくという感じです。15年前に阿守とどんな音楽をやろうかという話をしていた時、当時よく見ていたフラメンコ、ロマをドキュメントした映画があり、こんな感じのことがやりたいとインスピレーションを受けました。でも僕らは日本人だからそれをそのままやるという訳ではなく。

阿守さん 僕らはどこかの国の音楽の第一人者になりたいわけではなく、それぞれのエッセンスを用い、それに対してメンバーがそれぞれアプローチする、それが予測もつかないような乱反射を起こす。自分が持ってきたフレーズが思いもよらないところに着地することもしょっちゅうありますが、それが楽しい。そこから最終的に6人でまとまったらシベリアンの音楽になる。だから一元的じゃなくて多元的ですね。
例えて言うと、動き方が違うチェスの駒をメンバーそれぞれが持っていて、こっちがこう出したら、次にこう出してくる、というような感じ。だから読めないし、最初は誰もゲームが分からないのです。しかし、こういうゲームだったんだと分かった瞬間に音楽のイメージがブワッと出てくるのです。

―メンバーお一人ずつ、それぞれが影響を受けたアーティストを教えて下さい。

阿守さん 僕はクラシックです。そんじょそこらのクラシック好きじゃないです。音楽理論は詳しくないので耳で記憶して、例えばラヴェルがこの曲でやっていたアレンジにしたいというのをみんなに相談したら、みんながそれをやってくれる、みたいな感じです。

藤田さん 僕はもうスーパー坂本龍一オタク(笑)。あとドリームシアター(アメリカのメタルバンド)。その他にもたくさん好きな人がいますけど、その二人への愛と比べたらちょっとワンランク落ちますね。

真鍋さん 僕は好きなジャンルっていうのがあんまりなくて、自分の気に入ったギターサウンドが全てです。ロックでも、メタルでも、ジャズでも、クラシックでも、いいなと思ったものはなんでも。それがどんどん広がっていって、自分が何屋さんか言われたらわからない(笑)それを全部シベリアンに注入しています。

平尾さん 僕は普段聞くのはメタルばかりですが、シベリアンのサウンドに出ている音楽として一番影響を受けたのは、クランベリーズ(アイルランドのロックバンド)だと思います。そこを外すとハードロック、ヘヴィメタルしか出てこないので(笑)

山本さん 僕はファンクですね。ラリー・グラハム、ブーツィー・コリンズ、ジェームス・ブラウン。でもシベリアンの音楽的な話でいくとジャコ・パストリアス(ジャズ&フュージョン系のエレキベーシスト)に一番影響を受けています。でも一番初めに影響を受けたのは聖飢魔Ⅱです(笑)。

土屋さん あんまりないのですが、ヴァイオリンをかっこよく弾きたくなったのはナイジェル・ケネディ(イギリスのヴァイオリニスト)の影響です。パンクファッションで普通にクラシックのヴァイオリンコンチェルトを弾くような人です。作曲の仕事をし始めてからはその時々で聴く音楽が違うので、EDM(クラブのダンス音楽)とかも聴きますし。映画音楽もやっていますが、「アメリ」という映画の音楽を作ったヤン・ティルセン(フランスのミュージシャン)は凄い好きだし、多分シベリアンにもそういう要素がありますね。

―シベリアン・ニュースペーパーは2005年に結成、その後2014年に一度活動を休止しておられ、去年2018年に活動再開されました。今後の活動についてお聞かせていただけますか。

藤田さん 活動休止前にはたくさんのスタッフが関わって下さっていたのですが、再開後は少し身軽に、メンバー6人で全てを決めています。そのことでこれまでやってきた仕事のやり方を、根底から見直していくということをやりたいのです。例えばコンサートホールやライブハウスでのコンサートだけでなく、世の中にたくさんある素晴らしいロケーションの場所でやったり、シベリアン・ニュースペーパーと何かをやりたいと考えている人と一緒にやったり。「こうじゃないといけない」という、これまでのミュージシャンの仕事のやり方を、根底から疑っていきたいなっていうのが今の活動の考えです。
今僕が思っているのは、シベリアン・ニュースペーパーというバンドを、作曲をして、演奏をして、CD、DVDを作って売って、というだけの集団に留めたくないということです。例えば今年3月に富田林市で開催したプラネタリウムライブでは、阿守が台本を作って星空解説を行ったのですが、今までの事+1、という感じで、少しずつ新しいことを試みていきたいと思っています。
音楽というのは、僕はコミュニケーションツールだと思っています。例えば音楽が好な人達の中にも、貧乏な人とスーパーリッチな人がいて、普通に生活しているだけではこの二つの階層にはあまり接点がないのですけれど、もしこの中で同じ音楽が好きだった場合、普段の生活のバックグラウンドを離れて音楽の話だけで盛り上ることができる。それは例えば日本人でも、アフリカ人やヨーロッパ人やアメリカ人でも、ひとつのバンドやミュージシャンが音楽を奏でれば、そこで言語を超えたコミュニケーションが生まれるのですよね。なので、そのような形でコミュニケーションツールとして音楽を使うようなバンドでありたい。シベリアン・ニュースペーパーをハブ(結節点)としてどこかとどこかを、誰かと誰かをつなげる、例えばプラネタリウムとお客さんを、三木市の方と何かをつなげるということが、僕達の活動のひとつだと思っています。

―三木労音例会にむけての抱負をお聞かせ下さい。

藤田さん 三木を知るためにまず一泊二日で観光に行きます。金物屋さんを回ります(笑)

阿守さん 三木の地元の人しか行かないような居酒屋に行って、死ぬ寸前まで飲みたいですね(笑)

シベリアン・ニュースペーパーのメンバーのうち4人の地元である香川県観音寺市で7月13日に開催されたイベントに彼らが出演され、三木労音から4名で参加しました。
同日の開演前の貴重な時間をいただき、このインタビューをさせていただきました。
(左6人がシベリアン・ニュースペーパーのメンバー)



シベリアン・ニュースペーパー プロフィール
2005年結成 バイオリン、アコースティックギター、クラシックギター、コントラバス、パーカッション、ピアノの6人編成インストゥルメンタルバンド。
2006年 1st アルバム「ASIATIC SPY」発表、 イギリスのマンチェスターで行われた音楽フェス「In The City」に出演、BBCにて世界中に放送される。
2007年 FUJI ROCK FESTIVAL 出演、フランスのカンヌで開催された音楽見本市「MIDEM」に参加。
2008年 2nd アルバム「COMICAL SALUTE」発表、タイガーIH炊飯ジャーTVCMに「SLOVENIAN MORNING」を提供。
2009年 ヴィヴァルディ「四季」を編曲したコンサートを開催、同コンサートを収録したアルバム「四季」を発表。
エドワードゴーリーの絵本「敬虔な幼子」の世界観を楽曲化したコンサートを開催、PE’Z 10周年トリビュートアルバムに参加。
2010年 3rd アルバム「HISTORIA SIBERIANA」を発表。
2012年 4th アルバム「0」を発表、演劇集団キャラメルボックス「無伴奏ソナタ」に楽曲を提供。
2013年 演劇集団キャラメルボックス「隠し剣鬼ノ爪、盲目剣谺返し」に楽曲を提供、愛知県豊川市制70周年記念番組「豊川からアルマ望遠鏡へ宇宙へと続く道」に楽曲を提供。
2014年 ラストツアーを行い活動休止。
2018年 神戸で行われたエストニア音楽祭への出演を皮切りに活動再開

オフィシャルサイト http://www.siberian-newspaper.com/


三木労音第172回例会
シベリアン・ニュースペーパー
2019年9月16日(月・祝)18:30開演
三木市文化会館小ホール
入会希望の方は、チラシ裏の入会申込書に会費2か月分(シベリアン・ニュースペーパー例会から参加希望の方は8・9月分)と入会金(1,000円)を添えて、三木労音会員か事務局までお申し込み下さい。
ホームページからのお申込みはこちら→http://www.mikiroon.com/info.html
詳細は三木労音事務局 TEL 0794-82-9775、またはメールinfo@mikiroon.comまでお問い合わせください。

0 件のコメント:

コメントを投稿