2014年11月4日火曜日

【次回例会紹介】祖先から受け継がれてきた伝統芸能を 今を生きる人々を励ます力に―民族歌舞団 花こま

次回例会は、三木労音結成以来、様々な場面でお世話になってきました「民族歌舞団 花こま」の登場です。
これまで数多くの地域公演(猿まわしと共演なども)、94年には初の例会出演(車人形劇「新曲さんしょう太夫」公演)、今年は3月に定期総会のゲストとしてお越しいただきました。
長い会員の皆さんにはお馴染みの花こまですが、今回のほわいえでは、あらためて座長の藤尾千恵子さんにインタビューしましたので、ご紹介いたします。

左から 藤尾千恵子さん、中山伸一さん、久保田弘さん、川口としゑさん



Q1 まず花こまがどのような経緯で結成されたか教えて下さい。

花こま座長 藤尾さん(以下、花こま) 私たちの母体は、姫路労音「民族音楽研究会こまの会」を中心とする、播州の民族音楽研究会です。結成は1987年10月25日です。
1980年代当時、私たちの仲間が様々な社会問題に直面していました。在日韓国・朝鮮人だけに義務付けられていた外国人登録証の指紋押捺を拒否する「指紋押捺拒否運動」、国鉄職員の空前の大量解雇と分断を生み出した「国鉄分割民営化問題」、終身雇用が崩れ、会社の方針に異を唱える者は一方的に解雇される「非正規雇用問題」など。また沖縄の米軍基地の被害や、諫早水門開門裁判など、今なお私たちの生活に暗い影を落としていることも起こりました。
お金儲けを追及するあまり、冒してはならない社会構造、自然環境、人間関係を壊してしまったのではないか。「生まれ育った故郷で、平和で穏やかに、あたり前の生活し、命を大切に生きていきたい!」そんな皆さんの想いを民族の芸能を通して、共に学び、共に励まし続け、全国の人々と一つになって生きていこう、そんな歌舞団をつくりたいと思い、結成しました。

Q2 これまで国内外で数多くの公演をされていますが、どのようなところで公演をされてきましたか。印象的なエピソードなどを教えて下さい。

花こま 車人形「新曲さんしょう太夫」(森鴎外原作、タカクラテル改作、平井澄子作曲)公演では様々な思い出があります。
兵庫県但馬・竹野町の公民館での公演では、公演後一人のおじいさんが太夫席に近づいて来られ、黙ってお金を置いて帰られたことがありました。持ち合わせの小銭を全部、という感じでした。その気持ちがとてもありがたく、嬉しく思いました。
またキューバで行われた世界人形劇フェスティバルでのことです。「さんしょう太夫の」一節で、つしおお「おっかあ!」、母「つしおお!」と、抱き合う語りがありますが、キューバはスペイン語ですので、こう変えて語りました。つしおお「マードレイ!」、母「ミ イホ(私の息子)!」。するとどうでしょう、これまでの客席の空気が一変し、この上もない集中のすごさを感じ、驚かされました。
一方こんなこともありました。韓国での獅子舞や餅つき公演の時です。一人のおじいさんが怒りながら、公演を観ているおばあさんを連れ出そうとしていました。騒動になりそうなところを、クンドゥル(韓国民族芸術団、三木労音でも08年に例会登場)のメンバーが丁寧に、そっと二人を連れ出してくれました。後で聞くと、おじいさんは「お前は、何で日本人の芸能なんか観るんだ!」、と怒っていたようです。日本の植民地支配によって傷つけた心の痛みを思い知らされる出来事でした。市民どうしが、直接出会い、文化を通して交流を続け、理解し合う事の大切さをあらためて思いました。

Q3 今回の演目の中心は歌舞伎や講談などでもお馴染みの「佐倉義民伝」を上演していただきますが、どのようなお話か、またなぜこの演目を取り上げようと思われましたか教えてください。

花こま 名主「宗(そう)吾(ご)」と渡し守「甚(じん)兵衛(べえ)」の、農民の窮状を救うために命をかけた人間同士の結びつきと、その生きざまを描いています。
作品の中で、名主である「宗吾」、領民である「甚兵衛」、それぞれが、それぞれの立場で、その時代の中で、自らの生き方を問い直し、行動を起こします。昨今、人間性が破壊され、人の命を奪う残酷な事件が数多く起きています。自然や命よりも、お金儲けを第一に走り続けて来た日本社会が、今大きく問い直されているのだと思います。甚兵衛・宗吾の生き方を自らに問い、先人が伝えたこの作品で、今の世を変えていける力にしたいと思いました。

Q4 今回の花こまの舞台では、他の歌舞伎などと演出の違いがあるとお聞きしましたが、どのような点でしょうか。

花こま 歌舞伎など、今まで演じられてきた内容は、名主「宗吾」の功績のみに光があてられてきました。「百姓一揆」にしても「直訴」にしても、名主「宗吾」一人だけの問題ではありません。「宗吾」にそう決意させた、領民である百姓の存在なしに、語り切れるものではありません。今作では名もなき多くの民百姓の声なき声、想い、気概、誇りを、その代表として渡し守「甚兵衛」が語り、訴えかける作品として改良されています。どんな時代になっても、誰かが「宗吾」を演じ、誰かが「甚兵衛」を演じていくものだと思います。

Q5 当日は車人形芝居の他に太鼓や獅子舞、子守唄などの演目も予定されていますが、こうした地域で古くから受け継がれてきた芸能を演じられる際に、どういったところに魅力を感じますか。

花こま 各地にある芸能には、その土地の歴史・自然・人間性が表現されています。同じ獅子舞であってもライオンのようであったり、鹿のようであったり、麒麟のようであったりします。中で操る人も、1人から10人くらいまでだったりします。ひとつの芸能から、その土地の人々が何を求め、楽しんだのかが伝わって来ます。日本海側、太平洋側、瀬戸内海とで、その表現・内容も、観る側の反応も違います。でも、共通しているのは、自然を敬い、生きる知恵があり、みんなが平等に幸せになることを願っていることです。
平和と平等を願う、それが芸能であり、よりよい明日を願う人々の心を励まし、元気づける、そんなエネルギーが芸能にはあると思います。人間らしく生きていくために芸能を育み続けてきた先人の精神を、いつの時代も守り、発展させていくことが大切だと考えています。

Q6 花こまは2011年に起きた東日本大震災で被災された地域でも、定期的に支援活動をされておられるということですが、現地の状況、また活動の中で感じることなどを教えて下さい。

花こま 主に、原発事故被害を受けている福島県に行っています。今年も被災地に行ってきましたが、津波で町ごと無くなった地域も、各家の敷地跡の草が伸び放題で、いまだ何も変わっていません。放射能の不安と進まぬ生活再建に心が痛みます。原発事故問題はもちろんですが、国が国民の命を守るために、税金は使われるべきだと思います。福島の除染は、原発建屋を建設した大手ゼネコンが行い、その上除染作業は遅れがちで、汚染土壌は各自の敷地で保管となっています。まだまだたくさんの矛盾が渦巻いており、この国の貧しさを感じます。「自分たちは、忘れ去られていくことが一番怖い」と、言われた福島のお母さんの言葉が、いつも心をよぎり、心が痛みます。
日常的には、福島の皆さんと離れていますが、毎年公演に伺うと、皆さん本当に喜んで下さいます。お年寄りは、演目が進むにつれ、どんどん若返り、生きる力がみなぎって来るようでした。医療現場を守る看護師さんたちには、生き生きとした笑顔が溢れていました。芸能は、人が生き抜く力だと強く思わされます。

Q7 最後に三木労音会員へ、今回の例会に向けてのメッセージをお願いします。

花こま 花こまは、結成28年目をスタートさせました。三木労音の皆様には、結成当時より、大変お世話になり、心より感謝申し上げます。また、「新曲さんしょう太夫」に続き、いち早く「佐倉義民伝」を例会として取り上げて下さり、ありがとうございました。日本人が、大切に守り育てて来たこの作品に希望をこめて、一生懸命上演させて頂きます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
文化の花を咲かせながら、日本人の真(まこと)の美しい心を育てていきましょう!



民族歌舞団 花こま
日本の豊かな民族芸能を受け継ぎ、普及し発展させて行くことを目的に1987年、姫路民族音楽研究会「こまの会」より独立し、旗揚げ。
姫路市内や播州・兵庫県内を中心に、全国各地の保育園や小・中学校、地域などで公演活動を続けている。中でも、車人形浄瑠璃芝居「新曲さんしょう太夫」は各地で好評を得て、上演は100回を超えている。
海外との文化交流も、1998年キューバ移民100周年記念公演をはじめ、2004年アメリカ・フェニックス市「日本の祭」、同年韓国光州芸術祭、2005年韓国・光州「アジアマダン」、2007年韓国山清郡「韓日伝統芸能交流公演」、2008年にはキューバ「第8回世界人形劇フェスティバル」、2009年韓国山清郡「第9回薬草祭」など数々行っている。
1999年第21回姫路市芸術文化賞文化年度賞を受賞。
私たちの先人が心をこめて育んできた民族の芸能で、人々を励まし、互いの心を結びあえるように、全国各地で公演を重ねている。


三木労音11・12月例会
民族歌舞団 花こま 車人形「佐倉義民伝」
2014年12月4日(木)19:00開演 三木市文化会館小ホール
新入会員大募集中!お申し込みは三木労音TEL0794-82-9775、もしくはホームページhttp://www.mikiroon.comからも入会できます。

0 件のコメント:

コメントを投稿